馬
正月以来気ぜわしい毎日で、あっという間に1月も15日。
早いものだ。
少し落ち着きを取り戻して見ると、「今年は午年か」と改めて思う。
そう言えば老母も午年で96才を迎えるが、つつがなく一年を送ってくれればと思う。
思い出をまさぐって見ると、昭和38年、オレが小五の時にトラクターを導入するまで馬は、
重要な農作業の担い手だった。今風に言うとパートナーか。
馬が大好きだった祖父はその後も飼い続けていた。
昭和43年、オレが高ニのある時、なじみの馬喰が来ていて、祖父と何やら話し込んでいた。
祖父の口から「じゃあ売ることにするか」と言う声と共に、馬喰と祖父は手を握り合い、
敷いていた座布団をその上に被せ、
「これでどうだ!」
「いやいやとんでもない。」と馬の値決めが始まる。
「それじゃぁ、これで」
「あの馬の立ち姿見ただろ。性格も落ち着いているし!」
「種治さんそれは高過ぎる。畑のあちこちでトラクターが走り回る時代だ。買っても売り先が見つかるかどうか。仕方ないあとこれだけ足すから」
「時代が、と言われりゃ仕方がないか。でももう一越」と粘る祖父。
「じゃあ中を取って、これにするか。もうこれ以上は無理だ」と馬喰。
「うーむ、しゃあないか。時代が時代だからなぁ。ヨシ!売った」と言いつつ、
まだまだ満足はしないがなぁと言った表情だった。
馬の売買に際しても、巌流島の一騎打ちと言うか決闘と同じ真剣勝負。
余人の雑音を排除する為、握り合った指先が見えないよう座布団を被せての値決めは、
当に生活を掛けた命懸けの勝負だったんだなぁ。
馬喰が帰った後で「じーちゃん、座布団の下て何やってたの」とオレ。
祖父は「指を鉤型にしたりマルにして数字を表すんじゃ」とオレの手を握りながら教えてくれた。
何せ遥かに昔の事。6桁7桁の数字をどう表すか忘れてしまったが、
懐かしく思い出す。





