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2016年3月25日(金) 09:17

これも規制改革?

 業界紙、日本農業新聞にこんな記事が載っていました。

SN3V0216.jpg「生乳指定団体、見直す」です。河野太郎行革大臣が乳価の底上げ狙う、とのサブタイトルがついています。これだけ見ると素晴らしい、是非頑張って!!と、応援したくなるような見出しです。本文にもその主旨では酪農家の取引の選択肢を増やし、乳価の底上げを図る事が狙い。とも書かれています。

さて、私どもの生産する牛乳(生乳)は基本全量買取で生産量も価格も国が管理しています。特に北海道は加工原料乳生産地域として指定され、飲用向け、バター向け、チーズ向け、脱脂粉乳などと用途別単価が設定されています。飲用向けが最も高く(都府県ごとに単価が違う)チーズ向けは最も低いためチーズ向けには補填金が有ります。そこで月ごとに飲用向け00%、チーズ向け00%、バターは00%とそれぞれの単価に用途別に振り向けられた量を掛算し1kg単価を算出します。そして各酪農家の生産量毎で収入が決まります。それに、生乳の成分や乳質によりプレミアムやペナルティが課せられ、当然ですが、それらに努力する人と無頓着の人では10年、15年の内に経営内容に歴然とした差が出てきます。きちんと競争の原理が働いています。

酪農家のコメントとしてJA浜中町の石橋組合長は、国に任せていると需給によって生産調整や緊急の増産要請があり、落ち着いて生産できない。またJA浜中町は全量ハーゲンダッツと契約してホクレンより高く販売している事もあり、酪農家の裁量に任せるべきとの意見のようです。また幕別町の田〇畜産はホクレンを脱退し直接栃木県?の取引業者に販売しkgあたりの単価が数円~10円ほど増えた!皆も自主的に販売先を選定することにより所得向上が図れるとの意見のようです。

何れも御最もな意見のように思います。が、見えていない現実があります。

今批判のあるこの制度は「加工原料乳生産者補給金等暫定措置法」と言って昭和40年に制定。翌41年施工された法律です。

戦前は個人とメーカーとの契約で牛乳を搾っていました。つまり自分で販売しようがどのメーカーに出荷しようが自由でした。その後、メーカー側から一戸一戸の支払い業務が煩雑なため、各戸に支払っていた乳代をどこか一括で受け取ってほしいと言う要請で産業組合が出来ました(帯広市の場合)。そして次に、雪印、明治、森永、などのメーカーによって乳価が違ったり、冬の飲用不需要期には出荷制限があったりと、酪農家にとって余りにも不安定この上ない事情が出始めました。

それらを勘案して、昭和41年、北海道酪農を安定的に拡大するため国の全量管理、補給金(メイカーの買取希望額と生乳の生産費の差額を埋める)の設定となりました。そのときに全国10の指定生産者団体(ホクレンなど)も組織され、酪農家は全てJAを通じて、生産者団体へ。生産者団体はメーカーのニーズを調整し、余すことなく全量買ってもらうといった生産と販売の分業化が進んで今日まで続いて来ました。

過去の例から見ても、生乳を個人で販売するには余りにも多くのリスクが有ります。

また韓国の例ですが、もっと酪農家を減らし国内で飲用牛乳のみ生産し、チーズ、バター、脱脂粉乳等は外国から輸入すればよいと言う風に合理的に考えれば全てが最も高額な飲用乳価に設定できますし、残った酪農家はリッチになるかもしれません。が、しかし果たしてそれでよいのでしょうか?安心安全な国内産をドンドン減らし、輸入のために爆買いの中国などと張り合い、国民の生命を危険にさらしても良いのでしょうか。

韓国の二の舞はごめんです。

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